『時砂の王』
小川一水さんの『時砂の王』をようやく読み終えました.ようやくというのは,オレに原因があるのであって,小説は一気に読めます.途中で論文査読などの作業が入ってしまったため,そちらが気になって,途中まで読んで中断していたのです.そうでなければ,とうの昔に読み終わっていたでしょう.ちゃんとした感想を書けるほど読み込んではいませんが,少しだけ紹介したいと思います.
長編がひとつでも二つでも作れるのではないかというような内容を,惜し気もなくほんの数ページの記述に納めて淡々と戦史を綴っていきます.ひと言で時間戦争ものと言い切ってしまうのは簡単ですが,敵性体の正体がわからないというところは,神林長平さんの『戦闘妖精雪風』にも似た雰囲気があります.しかし,時間を遡って人類を救済するという部分が完全に異なっています.
卑弥呼が登場し,物語の中心を担っていきます.メッセンジャー"O"(使いの王)と呼ばれる人間型の人工知性体が,人間性を得るところから始まりまり,人類をどのようにして守っていくのか,卑弥呼とどのようにして,何を想って戦うのかが全編を通して描かれています.
この物語のポイントは,なぜ魏志倭人伝の時代が舞台にならなければならなかったのかというところにあります.話は未来と過去を行き来しますが,Oの過ごした時間,敵性体との戦闘,何度も訪れる人類の滅び,人間のおろかさ,そして誠実さが物語を形作っていきます.
最後は畳み掛けるように結末に向かいますが,ここが少し物足りない感じがしました.それまでの物語の密度が濃かったように,最終章に向けての物語も同じ密度で進んでいきます.もう少し結末への道を伸ばして,書き込んでもよかったのではないかと思いました.
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