参議院本会議で「生物多様性基本法」というのが可決されたとのこと。
asahi.com:生物多様性基本法が成立 - 政治 (2008/05/28)
多様な生物を守り、その恩恵を持続的に利用することを目的にした「生物多様性基本法」が28日、参院本会議で全会一致で可決され、成立した。6月にも施行される。
国や自治体に対し、生物多様性を守る国家戦略や地域戦略の策定を求めている。国は法制や財政、税制上の措置のほか、公共事業など開発の計画段階で環境への影響評価が必要となる。生物多様性に影響が及ぶ恐れがある場合は保全策をとらねばならない。
●生物多様性基本法案
生命の誕生以来、生物は数十億年の歴史を経て様々な環境に適応して進化し、今日、地球上には、多様な生物が存在するとともに、これを取り巻く大気、水、土壌等の環境の自然的構成要素との相互作用によって多様な生態系が形成されている。
人類もまた生物として、生物の多様性のもたらす恵沢を享受することにより生存しており、生物の多様性は人類
の存続の基盤となっている。また、我が国において多くの生物や豊かな自然と共生する固有の文化が育まれたように、生物の多様性は、地域における固有の財産
として地域独自の文化の多様性をも支えている。
一方、生物の多様性は、人間が行う開発等による生物種の絶滅や生態系の破壊、社会経済情勢の変化に伴う人間
の活動の縮小による里山等の崩壊、人為的に持ち込まれた外来種等による生態系のかく乱等の深刻な危機に直面している。また、地球温暖化等の気候変動に伴う
生息環境等への影響という新たな課題も生じており、生物の多様性の確保のためにはなお一層の努力が必要とされている。
国際的な視点で見ても、過剰な伐採や森林火災などによる森林の減少や劣化、乱獲による海洋生物資源の減少な
ど生物の多様性は大きく損なわれている。我が国の経済社会が、国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみれば、我らは、世界の生物の多
様性の恵みに支えられて暮らしていることに、改めて深く思いをいたすべきである。
我らは、生物の多様性のもたらす恵沢を将来にわたり享受できるよう、次の世代に引き継いでいく責務を有する。また、我らは、人類共通の財産である生物の多様性を確保するために、我が国が国際社会において先導的な役割を担うことが重要であると確信する。
今こそ、生物の多様性を確保するための施策を包括的に推進し、生物の多様性を損なうことなくその恵沢を将来にわたり享受できる持続可能な社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない。
ここに、生物多様性の保全等についての基本理念を明らかにしてその方向性を示し、生物多様性の保全等に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。
(目的)
第
一条 この法律は、人類の存続の基盤である生物の多様性を将来にわたり確保することの重要性にかんがみ、環境基本法(平成五年法律第九十一号)の基本理念
にのっとり、生物多様性の保全等について、基本理念を定め、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにし、並びに生物多様性国家基本計画の策定そ
の他の生物多様性の保全等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、生物多様性の保全等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び
将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。
なんでこういう法律が必要なんだろうと思ったら、前提となる条約があるのですね。
外務省: 生物多様性条約(生物の多様性に関する条約:Convention on Biological Diversity(CBD))
1.背景
(1)人類は、地球生態系の一員として他の生物と共存しており、また、生物を食糧、医療、科学等に幅広く利用している。近年、野生生物の種の絶滅が過去に
ない速度で進行し、その原因となっている生物の生息環境の悪化及び生態系の破壊に対する懸念が深刻なものとなってきた。このような事情を背景に、希少種の
取引規制や特定の地域の生物種の保護を目的とする既存の国際条約(ワシントン条約、ラムサール条約等)を補完し、生物の多様性を包括的に保全し、生物資源
の持続可能な利用を行うための国際的な枠組みを設ける必要性が国連等において議論されるようになった。
(2)1987年の国連環境計画(UNEP)管理理事会の決定によって設立された専門家会合における検討、及び1990年11月以来7回にわたり開催された政府間条約交渉会議における交渉を経て、1992年5月22日、ナイロビ(ケニア)で開催された合意テキスト採択会議において本条約はコンセンサスにより採択された。
(3)本条約は、1992年6月3日から14日までリオデジャネイロにおいて開催された国連環境開発会議(UNCED)における主要な成果として、「気候変動に関する国際連合枠組条約」とともに右会議中に署名のため開放され、6月13日、我が国はこれに署名した(署名開放期間内に168か国が署名を行った)。
(4)1993年5月28日、我が国は寄託者である国連事務総長に受諾書を寄託することにより、本条約を締結した。
(5)1993年12月29日、所定の要件を満たし、本条約は発効した。
(6)2007年12月現在、189か国及び欧州共同体(EC)が締結。ただし、米国は未締結。
2.条約の目的
本条約は、
(1)地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全すること
(2)生物資源を持続可能であるように利用すること
(3)遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分すること
を目的とする(第1条参照)。
このことになぜ興味を持ったかというと、今読んでいる本(土肥一史『知的財産法入門 第10版
』)にこの条約に関する記述があったため。「生物多様性」が「知的財産」とつながっているとは思いもよりませんでした。
土肥 一史
中央経済社
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