安全・安心

2007/02/17

ファクター10 とエコリュックサック

久しぶりに安全・安心研究会の紹介.今月の話題は「ファクター10」でした.(「ガスター10」ではありません(笑))
「ファクター10」とは,簡単に言ってしまえば,環境の資源の動きを 50 年後に現在の 10 分の1にしましょうという話のキーワード.環境問題の話ですね.オレは環境問題には疎いので,なかなか興味深い話でした.

フレードリヒ・シュミット=ブレーク氏が提唱する「ファクター10」では,(私の理解が間違っていなければ) 「エコリュックサック」と「MIPS ("Material Intensity" per "Service Unitz")」の問題を解決しようという二点の提言.「エコリュックサック」は何かを作り出すためにはその背後に大きな資源の動きがあり,それが環境破壊につながっているということ.「MIPS」は資源効率を表すための指標で,サービス単位あたりの(エコリュックサックを含めた)動かす資源の総量.このふたつを小さくすることで,環境破壊が食い止められるということでした.

もうひとつキーワードがあり,それが「脱物質化」.物質に依存することなく生活する環境を作り出そうというもの.

この提言のポイントは CO2 削減のような出力側の削減だけではなく,入力側の資源の動きを根本的に変えようということ.ただし,具体的にどのようにやっていくのかということは示されていません.それを各分野,各事業で考えましょう,という提言なのです.

CO2 削減の指標の計算には LCA という方法が使われるそうですが,その方法と相矛盾する話ではなく,CO2 削減の考え方とともに生産元から小さくしようということ. CO2 を日本という国(あるいは他の先進国)だけでいくら削減しても,輸入元の国で CO2 が増えてはグローバルに見て削減したことにはならない.そこで原料の縮小とともに,原料を取り出すために使われる力なども削減するという話なのです.

基本的な理念は単純ですが,これを実践するのは難しいですね.2050 年に 10分の1にするためには少しずつでも今すぐ取り組み始めなければいけないということでした.

リサイクルについても,リサイクルに使用する外部からの資源の使用が,結局エコリュックサックを大きくするのであれば,他の方策を考えるべきだというのもうなずける点でした.

事例が少ないらしいので,具体的にどのようにやっていけばよいのかということについてはまだまだ議論の余地があるらしいですが,入力側に視点を置いた,面白い考え方だと思いました.基本的には非常にシンプルな考え方ですが,エコリュックサックの総量を算出したりすること自体が難しいんだろうと思います.

脱物質化」の話を聞いたときには,即「IT化」が頭に浮かびました.貨幣の電子化や紙上情報の電子化などなど.しかし,コンピュータを動かすためにも資源が必要なので,それだけで単純にはいかないというのも難しい点です.

翻訳書が二冊出ているそうですが,どちらも原書からして難しい内容なので,楽しんで読み進められるというものにはなっていないそうです.「エコリュックサック」の本は昨年出版されたので,比較的新しい内容について具体例なども書かれているそうですが,本当に興味がある人じゃないと読むのはつらいかもしれないというのが講師の先生からの話でした.

エコリュックサック―環境負価を示すもう一つの「重さ」
フリードリヒ シュミット=ブレーク 佐々木 建 Friedrich Schmidt‐Bleek 花房 恵子
省エネルギーセンター
売り上げランキング: 231607

ファクター10―エコ効率革命を実現する
フリードリヒ シュミット‐ブレーク Friedrich Schmidt‐Bleek 佐々木 建
シュプリンガー・フェアラーク東京
売り上げランキング: 180537

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006/09/23

2006/09月度 安全・安心研究会

たまには真面目なブログも...というか,こっちがオレの本性だいっ!

2006/09/22 第25回安全・安心研究会「エラーマネジメント研究会活動報告~事故・トラブルを低減するために実務者は何をすべきか~」.

最近の産業事故(JCO臨界事故,雪印集団食中毒,JR西福知山線脱線,東電大規模停電など)から問題点の抽出,結果から原因の追究.エラーマネジメントの手法などの説明を聞く.プラント系など,ハードウェアのエラー対応が今までは中心だったが,これからは Human Factor についてのエラーマネジメントが必要になるだろうと言う話.

情報セキュリティ分野でもリスクマネジメントの手法を用いて,資産,脅威,対策を防止,抑止,検知,回復の観点から考えていく.リスク分析の手法は様々あるけれど,結果から原因を探る手法については不勉強で全く知らなかった.

事故が発生するまでの経緯をスイスチーズの穴にたとえた「スイスチーズモデル」というのが面白い.スイスチーズをスライスしたように,それぞれの段階では防止措置に穴があるが,すべての穴を通り抜けるケースが事故につながると言うもの.こういうモデルから,エラー分析を行っていく.

いくつかの手法をご紹介いただいたが,中でも CREAM (Cognitive Reliability and Error Analysis Method: 認知信頼性・人的過誤解析手法)というのが興味深かった.分析者の知識や経験によって差が出ないように,あらかじめ作られている表から事故の要因を絞り込んでいき,原因を抽出するという手法だった.

項目がそのまま合致するかどうかはわからないけれど,情報セキュリティの分野でも十分に使用できるものだと感じた.特に昨今の情報漏えい問題などはこうした手法を用いて,組織の欠陥を探るのに適しているのではないだろうか.

他にもいくつか,ヒューマンファクターを分析する手法を紹介いただいたが,もうひとつ興味深いのは,SKAB モデルという方法だった.KAB とは K: Knowledge(知識),A: Atitude(態度),B: Behavior(行動)をあらわし,それらを組み合わせたグラフによって事故の分析をしようというもの.KAB モデルはタバコなどの生活習慣病などのヘルスケアに使用されているそうです.そこへ,S: Skill (技能) を加えたものが SKAB モデル.これで産業事故の分析を行おうというものでした.言葉だけだとわかりづらいかもしれません.

未然防止を目標にして入るものの,エラーマネジメント研究会ではまだそこまでは到達できていないとのこと.今後の課題となっていました.

宣伝も...このエラーマネジメント研究会の有志が出版した「ヒューマンファクターと事故防止」という本が出ているそうです.

ヒューマンファクターと事故防止―“当たり前”の重なりが事故を起こす
エリック ホルナゲル Erik Hollnagel 小松原 明哲
海文堂出版 (2006/03)

ここには名前が書かれていませんが,執筆者として今回講師をしていただいた清川和宏さんをはじめとして,弘津祐子さん,松井裕子さん,作田博さん,氏田博士さんが訳されています.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005/10/31

原発の安全・安心

20051029-01原発の見学ツアーに参加したことは昨日書いたが,このツアーはプライベートで参加している「安全・安心研究会」のイベントである.福島第二原子力発電所の見学だった.
東京電力様を始めとして,経済産業省原子力安全・保安院,警察庁,福島県警,海上保安庁などの関係者のご協力により,とても充実したツアーになった.

原発の安全性という話になると,「核」や「被爆」の話になりがちだが,関心はどちらかというと,そこにはない.研究会メンバーの全員がそうだったかどうかはわからないが,少なくともオレの関心は人間系の脅威にあった.

関心の一つは外部の人間の悪意による脅威,もう一つは内部の人間の悪意による脅威である.
地上の守りは福島県警機動隊がおこなっていた.以前は,地元警察が警備を行っていたが,米国の 9.11 以降は機動隊が警備をするようになっている.今回は同機動隊第一小隊長から警備の状況などの話を聞いた.装甲警備車の配備の話など.

20051029-02右の写真が装甲警備車である.内部の写真も撮らせていただいたが,公開は控えておく.
原発への侵入を試みた事件もあったらしいが,いずれも個人が単独で行ったもので,テロ目的や組織的な行為ではないということだった.

原発のセキュリティゲートの写真は許可されなかった.通行IDを持っていないと,毎日顔を合わせて見知っている人でも入れない.当然といえば当然だ.米国からカナダ間の国境越えのような感じだった.むしろそれよりも物々しい雰囲気だ.

20051029-03一方,海からの侵入は海上保安庁がおこなっている.
海上保安庁の方からも話を聞いたが,日本を売る気はないので,警備の様子は書かない :-P
右の写真は防衛とは関係なく,海に排水している様子.冷却水などではないので,放射能に汚染された水を垂れ流しているわけではない,ということだ.ただし,温度が海水よりも7度ほど高いので,生態系には良くも悪くも影響を与えている模様.魚も豊富なようだが残念ながら,場所が場所なので,釣りはできない.

20051029-04 20051029-05 20051029-06
上の三つの写真は制御室のシミュレーションルームの様子.通常は,このような近くにまでは入れないそうだ.
一番右の写真に写っているレバーの形状が異なるのがわかるだろうか.レバーの形状を変えることで,操作の間違いなどに気づくような人間工学に基づいた配慮である.

原子炉は制御棒を挿入することで停止するのだが,停止の判断は制御室の任に当たっているチームの責任者:当直長が行う.この当直長が判断の全権を握っているのである.

「当直長の判断をチェックする機構はないのか」と尋ねたところ,「十分に信頼できる人物が当直長になっており,その判断は事後に審査される」という回答が返ってきた.私の質問の意図は船で言えば「船長」と「船医」のようなチェック機構を指していたのだが,伝わらなかったようである.船において船長の判断は絶対だが,船医が船長の判断力に疑問を持った場合,医学的な見地から十分な理由があれば,船長の任を一時的に解くことができる.このようなリアルタイムのチェック機構が,どうやら無いらしい.

システムの多重性や多様性についての説明はいろいろあったが,結局,人間系は一系統しかない,ということなのだ.チームは交代のために複数あったが,それらが並行して相互チェックを行うわけではないようだ.平時は当直長自身も上長や上層組織の指示を仰いで実行するが,何らかの異常事態においてはこの一系統が最終的に判断し,実施するのである.

かなりの私見だが,内部の人間系の防御機構(リスク回避)が少し弱く,当直長の最終判断権限のあり方などを見る限り,従事者の「人間性善説」に基づいた方法に偏っているように感じられた.

従来はツアーのコースにあった保護区域の見学は 9.11 以降,テロ対策のためにコースからはずされたそうである.
防護服を着てみたかった.その物々しさ(想像)を実感できれば,放射能の怖さを実感できたかもしれないからである.

技術的な面での防護に関する説明は,非常に丁寧に行われていた.移動中のバスの中で見たビデオやエネルギー館で拝見した映画の内容はやや古く,相変わらず「絶対安全」の説明に終始したように思える.しかし,担当の方の説明の方向性は「絶対安全」から「事故前提」に明らかに変化してきていた.これは非常によいことである.

20051029-0720051029-08エネルギー館では,イベントを開催するなどして地域住民とのコミュニケーションを密に行っている.土曜日ということもあり,老若男女を問わず,多くの方が訪れ,笑顔を見せていた.個人的には野外ステージのイベントにはかなり惹かれるものがあった.

今後は「安心」の面から,いかに透明性を高めていき,国民の理解を得ることと,核分裂エネルギーに代わる次世代,次々世代のエネルギーを実用に耐えうるものにすることが必要である.子供(まだ小学生だ)と孫の時代に,「安全」で「安定」した「安心」できるエネルギーが提供するために何ができるのか.我々ユーザは身の回りで出来ることが何かを考えることから始めようか.

20051029-09 20051029-10最後に,安全・安心研究会のために,特別コースを用意していただいた東京電力様に感謝の意を表して,サッカーのレディースチームの紹介をしておく.
左は練習場の風景.右はそのチームである「TEPCO マリーゼ」のパンフレットの表紙である.

追伸: 娘が土産にほしがっていた「分子」は手に入らなかった(わけわからん).また,SF作家の故 星新一さんがおっしゃった「原子は畑でとれる」という有名な言葉の真偽は残念ながら確認できなかった.

| | コメント (0) | トラックバック (7)

2005/10/30

じゃんっ!

東京電力の原子力発電所見学ツアーに行ってきた.
3
じゃんっ!
もらったシャーペンのあたまの部分.

あげないよっ

| | コメント (0) | トラックバック (0)