リンク: 紙媒体広告はどうなるのでしょう - Tyzohブログ.
上のリンクのブログで,図書館についての議論が交わされています.元々は「とらばーゆ」が紙媒体をやめて Web に完全移行するという話から始まっています.電子ペーパーなどをうまく利用して「書籍」や「雑誌」に近い形で電子文書を閲覧できないかというのが最初の問題提起.そこから派生して図書館でダウンロードサービスを行ってはどうかという話になりました.
図書館で電子書籍を借りられる,すなわち無料でダウンロードできるようになると,書籍の流通にも影響が出ます.オレは体裁を含めた「本」というものを所有したいという所有欲がありますが,一般には「本」を所有することよりもコンテンツが見られればそれでよいはずです.図書館に行けば(あるいは,図書館の Web サイトで)無料でダウンロードできるとなれば,書籍を購入する人がいなくなるかもしれません.出版業界にとっては大きな影響です.
今は紙でできている書籍のすべてが電子媒体に置き換わるというのはなかなか想像しにくいですが,その傾向は着実に進んでいます.ここで,思い切って,すべての書籍が電子媒体に置き換わると仮定した場合,図書館はどうなるのでしょうか.
そもそも図書館とはどういう存在なのかという点を考えてみなければなりません.上のリンクのブログに対して,図書館も新たなサービスを考える必要があるというコメントが寄せられていますが,これは「図書館ありき」の考え方で,図書館がどうして必要なのかという説明にはなっていません.
現在の公立図書館(以下,図書館)は,昭和 25 年に制定された図書館法(平成11年に改正)に基づいて設置されています.図書館を設置する目的(図書館奉仕)として第三条に次のように記述されています.
(図書館奉仕)
第三条
図書館は、図書館奉仕のため、土地の事情及び一般公衆の希望にそい、更に学校教育を援助し得るように留意し、おおむね左の各号に掲げる事項の実施に努めなければならない。
一 郷土資料、地方行政資料、美術品、レコード、フイルムの収集にも十分留意して、図書、記録、視覚聴覚教育の資料その他必要な資料(以下「図書館資料」という。)を収集し、一般公衆の利用に供すること。
二 図書館資料の分類排列を適切にし、及びその目録を整備すること。
三 図書館の職員が図書館資料について十分な知識を持ち、その利用のための相談に応ずるようにすること。
四 他の図書館、国立国会図書館、地方公共団体の議会に附置する図書室及び学校に附属する図書館又は図書室と緊密に連絡し、協力し、図書館資料の相互貸借を行うこと。
五 分館、閲覧所、配本所等を設置し、及び自動車文庫、貸出文庫の巡回を行うこと。
六 読書会、研究会、鑑賞会、映写会、資料展示会等を主催し、及びその奨励を行うこと。
七 時事に関する情報及び参考資料を紹介し、及び提供すること。
八 学校、博物館、公民館、研究所等と緊密に連絡し、協力すること。
オレは法律の専門家ではないので,解釈が間違っているかもしれませんが,上に引用した第三条の一から八までのいずれも,媒体がが紙から電子的なものに変わっても変わらないと思われます.「現在」だけでなく「過去」において出版されたものをアーカイブし,分類するという役割が図書館にはあるのです.つまり,提供が終わってしまった電子書籍であっても,それを保管し分類し提供するというのが図書館なのです.
一方,Google や Yahoo! などの情報検索(集積/キャッシュ)サイトが図書館に取って代わる可能性はあります.図書の分類が必要になるのは,その図書がどこにあるのかをすぐにわかるようにする必要があるためだとオレは思っています.分類の代わりに「タグ」がつけられていれば,検索機能で十分に機能するわけです.もっともその「タグ」をつける作業が「分類」に置き換わるのかもしれません.
さて,元の疑問に戻って,図書館は必要なのでしょうか.もう答えはお分かりですね.図書館はアーカイバとしての役割を持ち,研究会などの開催や展示,関係各所との連携協力のために必要なのです.ただ,現在のような設備としての「場」はもう少し形態を変える必要があるかもしれません.
ところで,そのとき電子書籍の流通はどうなるのでしょう.まず,電子コンテンツの場合,書籍の再販制度は無くなりますね.図書館Web で無料ダウンロードされると商売上がったりなので,レンタルビデオ屋のようにある程度の期間を置いてから図書館で取り扱うようにするか,あるいは,何ヶ月かは個人の装置(デバイス)にはダウンロードはできず,図書館の中だけで閲覧できるようにするなどの協定が必要になるでしょう.
避けて欲しいと思うのは,電子書籍の流通経路の違いによって,デバイスで囲い込みをしようとすることですね.ビューアとして使用するのがパネルなのか,電子ペーパーなのか,様々なアイディアはあると思いますが,オープンドキュメントフォーマットのようなものでフォーマットは統一してほしいものです.つまり,ビューアのデバイスがなんであれ,どこの電子書籍でも共通して使えるようにして欲しいということ.かつてのビデオテープのように VHS 対 β というような構図は,一消費者として避けて欲しいですね.
話が少しそれてしまいました.
コンテンツビジネスについて考えると,取次店や小売書店の位置づけが難しくなります.紙媒体のコンテンツが全くなくなると仮定した場合,それらのビジネスは成り立たなくなるでしょう.出版社がコンテンツを直接販売し,消費者に届ける形か,Amazon のように出版社をまたがってコンテンツを取り扱う Web サービスビジネスが主流になります.今でも Amazon は街の書店を圧迫しているようですが,手に取ってから買いたいという要望から,まだ存続できているのだと思われます.コンテンツの「立ち読み」にまで電子化が進むと,もう書店の意義はほとんどなくなります.あとはデジタル・ディバイドで電子化の恩恵を受けられない人たちに対するサービスが残るだけでしょう.
電子書籍を考えるとき,書籍ビジネスも図書館も,あり方を考えていかなければならないところに来ています.平成13年に施行された図書館に関する告示(「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準(文部科学省告示第百三十二号)」)では,電子資料についての収集などにも言及されています.図書館の存在意義を今一度再認識し,電子化された書籍のビジネスとの共存を考えていきたいものです.
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